top of page

第五 亡命の道

 

 このように、完全な行き止まりに至ったため、私名義の住居や土地を売却し、家財も全て手放し、昨年2016年4月8日、東京都港区に在るロシア大使館にて亡命申請をせざるを得なくなった(35)。しかし、この事態はネット上である程度話題になったものの、安倍内閣による検閲とメディア統制とにより、当日の朝大使館前で我々を強引に逮捕しようと駆けつけた警視庁の刑事らに対する怒鳴りや緊迫状況を撮影し、我々をもインタビューしたTBSやテレビ朝日、さらには、その後最多の資料提供を受けたフジテレビも、この極端な人権問題を一切報じない状態が続いている。そして、ロシア政府からの連絡を待つこの待機期間中にも、各機関に情報提供し、違憲投獄の証拠資料も送信するなど、解決を求め働きつづけたが、特定の個人を除いては、いかなる組織からも反応がない。 

 また、昨年7月に仇討嘆願の内容を書留郵便として官邸の菅宛に郵送したその直後に、谷垣禎一が突然表舞台から消え、今日まで何の説明もないことは実に異例であり、この甚だしい人権問題に直接関与していたことが判明したためのことであるに違いない。しかし、安倍内閣がこの問題を全面的にもみ消しつづけ、日本国憲法に著しく反する戦争法案までをも採決し、その独裁政治を進めているため、とうとう2016年8月末、政治団体全民党までもが活動停止に追い込まれる事態となった。協力者は多いが、やはり、それまで会長であった私に対する弾圧逮捕等を目の当たりにした有志が、この段階で新たな会長や事務局長として、選挙管理委員会に氏名、住所、職業等の個人情報を届け出ることにより、同様の嫌がらせや違法振舞いを被ることが目に見えているため、活動停止を余儀なくされたわけである。

 さらに、亡命申請資料一式により、我々がユダヤの血統を持つことを知ったロシア政府の動向を注視するなか、つい2ヶ月ほど前の昨年11月下旬、ペスコフ大統領報道官の妻タチアナ・ナフカとアンドレイ・ブルコフスキーの二人組がそのスケート演技で世界を揺るがせた。それは、ホロコーストを題材にした演技であり、アウシュビッツ強制収容所のユダヤ人に着せられた衣服の姿の二人による破廉恥な演技(37)とともにBGMとして「life is beautiful」(生きることは素晴らしい)が流れた、実に皮肉な合図と警告であった。

 さらに、経済協力を望むロシア連邦のプーチン大統領が、北方領土の課題を抱える安倍晋三との交流を深めようとしていること(36)は、この待機期間をとおして顕著となり、とりわけ、互いに刀や鎧兜をプレゼントする両首脳からは、彼らの仲を邪魔する者は「協力して倒そう」という姿勢が伝わってくる。まして、プーチン大統領は、人権問題の多いあのKGB組織に興味を持ってしまっている。

35

37

36

bottom of page